四句回向とは?:禅宗の声明に見る日本仏教の奥深さ

四句回向とは?:禅宗の声明に見る日本仏教の奥深さの概念図

四句回向とは?:禅宗の声明に見る日本仏教の奥深さ

What is 四句回向 (Shiku-Eko)?: The Profound Interconnectedness of Japanese Buddhism through Zen Chanting (Shomyo)

なぜお経の読み方は宗派でこんなに違うのか?法要でおなじみの「四句回向」を例に、意外と知らない漢字音の歴史を紐解く。禅の修行現場でも学べる機会が少ない「声明(しょうみょう)」の世界を、YouTube動画とともに深掘りしていく。他宗派の教えも取り入れながら、禅をより深く学ぼう。
目次

四句回向(しく えこう):原文と読み下し・現代語訳

願以此功徳 普及於一切 我等與衆生 皆共成佛道
げんにすくんてー ふぎゅうおんしん ごてんにしゅうさん かいきゅうしんぶどう
願わくは この功徳をもって あまねく一切に及ぼし 我らと衆生と 皆共に 仏道を成ぜんことを

四句回向:いつ仏教を取り入れたかでお経や漢字の読み方が違うおもしろさ

四句回向とは?:法要の最後に読まれる四行の祈りの言葉

要点:禅では、漢字を宋朝唐音で読むことが多い。禅は、さまざまな仏教宗派と関連して成り立っている。

四句回向(しくえこう)とは、法要の最後に読まれる四行の短い祈りの言葉だ。回向(えこう)とは、回転趣向の略で、自分の善根功徳を衆生に回し向けることをいう。これは、華厳経の回向品(えこうぼん)に由来する。日本では、お経を読んだ後、僧侶が必ずといっていいほどこうした回向をする。仏教の法要の最後では、功徳をすべての人に回し向ける普回向(ふえこう)が行われる。その中でも、四つの句で構成された今回の四句回向がもっとも一般的で、親しまれている。

さて、上記の読み方は、宋朝唐音の読み方だ。宋朝唐音というのは、宋の時代に、留学僧などが作った字音のことだ。禅宗では、宋の時代に中国に留学していたので、宋朝唐音で読む読み方が伝わったのだ。それだから、他の宗派では、これを呉音や漢音で読んだりする。それは、宋朝より前の呉や漢の時代に取り入れたからだ。また、なぜ宋朝なのに唐音というのかというと、日本では唐の影響が大きく、それ以降も中国から来たものは「唐」と呼んでいたからだ。だから、宋なのか唐なのか漢なのか、とてもややこしい。だからといって、禅宗がすべてのお経を宋朝唐音で読むかというとそうでもなく、呉の時代の読み方である呉音がまだ残っていて、呉音で読むこともある。

漢字の読み方:日本における概要

  • 呉音(ごおん)…5〜6世紀頃、仏教伝来と共に朝鮮半島を経由して日本へ。 日本で最も古い漢字の音。
  • 漢音(かんおん)…7〜9世紀、遣唐使らが長安から持ち帰った音。
  • 宋朝唐音(そうちょうとうおん)…鎌倉時代、南宋へ渡った禅僧が持ち帰った音。
  • 明朝唐音(みんちょうとうおん)…江戸時代初期、隠元禅師らによってもたらされた音

参考:日本の漢字音について(個人ブログ)

漢字の読み方:他宗派のいろいろな場合

要点:影響を受けた中国王朝によって、日本のお経は、いろいろな漢字の読み方が混じり合っている。

また、私は明確に唐音なのか?漢音なのか?呉音なのか?を分けようと思って漢字辞典で調べてみたのだが、いろいろ混じっていて明確な区別が難しいことがわかった。つまり、いろいろな漢字の読み方が混ざり合ってしまっているのだ。今回の四句回向は、分類がわかりやすいほうなので、今回の紹介にはもってこいだ。

たとえば、天台宗や真言宗は、漢音で、以下のように読む(参考:漢音の読み方(天台宗法話集))。

がんにしくどく ふぎゅうおいっさい がとうよしゅじょう かいぐじょうぶつどう

四句回向 漢音の読み方

また、黄檗宗では、明朝唐音で、以下のように読む(参考1: 黄檗宗の読経音源(国立劇場デジタルライブラリー)、参考2: 明朝唐音の解説(個人のブログ))。

エンイツコンテ プキヂイチエ ゴテンイチョンセン キャイコンチンフタウ四句回向 明朝唐音の読み方

今回は、宋朝唐音で四句回向を読んで、次に現代の読みで四句回向を読んだ。

現代の読みは以下の通りだ。

ねがわくは このくどくをもって あまねくいっさいにおよぼし
われらとしゅじょうと みなともに ぶつどうをじょうぜんことを

四句回向 現代の読み方

この回向は、妙法蓮華経化城喻品第七に由来している(参考:妙法蓮華経化城喻品第七)。日本では、法華経は、禅宗ではなく日蓮宗のイメージが強いので、なぜ禅宗や他の宗派もこの句を読むのか?と不思議に思う人が多い。しかし、私は、どの宗派も枝葉として別れているだけなので、根幹は同じだと考える。他の宗派が大切にしている経典を学ぶことは、禅を学ぶことにおいて大きな助けとなってくれる。

私のYOUTUBEでは、最後におまけで略三宝をつけた。

十方三世一切仏 諸尊菩薩摩訶薩 摩訶般若波羅蜜略三宝 原文

じーほーさんしーいーしーふー しーそんぶーさーもーこーさー もーこーほーじゃー ほーろーみー略三宝 読み方

略三宝はよくやりすぎてなんとなくつけないといけないような気がするからつけた。つまり、それほど頻繁に読まれるということである。

略三宝の意味は、東西南北の四方と、上下、さらにその間の八方(十方)に、過去・現在・未来というあらゆる時間(三世)にわたって存在する、すべての仏を讃える、という意味だ。

四句回向:YOUTUBEの読経の順序

  1. 四句回向(宋朝唐音)
  2. 四句回向(現代読み)
  3. 略三宝(現代読み)

核心

  • 仏教他宗派の経典を学ぶことは、禅を深く理解するために必要だ。
  • 四句回向は、法華経から引用されたものである。
  • 四句回向とは、法要の最後に読まれる四行の祈りの言葉である。

私の体験談:禅はいろいろな宗派が関係しあって成立している

要点:日本の寺院でも声明(しょうみょう)やお経の意味について学ぶ機会は少ない。禅はさまざまな宗派が関連して成立している。禅の声明を学ぶことで、他の宗派を通して禅を学ぶことができる。

私がこのブログで禅の声明(しょうみょう)を紹介していきたいと思った理由は、二つある。

一つ目の理由は、日本人がお経を聞いても全く意味がわからないうえ、日本の寺院において、声明を習ったり、お経の意味を知る機会が案外少ないからだ。私がいた道場では、外国から修行にやってきた人が多かったが、道場での生活様式に合わせたり、儀式を行うので精一杯で、声明を学習したり、経典の中身まで勉強する時間を取るのはなかなか難しい。これは、日本人僧侶でも同じで、寺院で生活していく上で、声明や経典の勉強まで時間を取れている人は、かなり限られると思われる。私は運よく、禅の修行道場時代から、声明に関しては特に関心を持って音源を集めてきた。また、寺院を出て個人探究者(個人修行者)となったことで、皮肉にも、声明において読む経典について勉強する時間も取ることができた。そこで、こうして、YOUTUBEと連携し、禅の声明ついて発信していくことにした。

二つ目の理由は、熱心な人ほど、禅は坐禅だけしていればいいから読経は必要ないのでは?と考える傾向にあるからだ。こうした人達は声明や他宗派の経典に関心を持たない。私もはじめはそのような疑問を持っていたのだが、禅の古典を学習すると、禅師たちは前提として経典を学び、経典を離れており、最初から経典を学ばない態度とは距離がある。禅は経典を離れる(不立文字)とは、それは経典を学び尽くした上での話であるのだ。また、禅の声明に取り組むことで、さまざまな宗派がお互いに影響し合っていることがよくわかった。そこで、こうして、日本仏教の相互関連から禅をみるという視点でも、発信していくことにした。

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Q&A

Q: なぜ略三宝(りゃくさんぼう)を読経の最後につけるのですか?
A: なぜならば、 十方(あらゆる空間)と三世(過去・現在・未来)にわたるすべての仏・法・僧の三宝を讃え、自身の修行の締めくくりとして感謝の念を捧げるためです。いままでたくさんの人々が仏教に関わってきましたが、この方々の活躍により、わたしたちは今仏教を学ぶことができるのです。略三宝が頻繁に唱えられるのは、こうした感謝の気持ちを、法要のたびに確認する大切な儀礼だからです。

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参考文献 / References

山田孝道 (1915) / 『禅宗辞典』 / 光融館 [Link]

この記事を書いた人

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She is a PR&librarian agent.
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