人間関係において「つい感情的になってしまう」、「後から後悔する言動をとってしまう」…そんな経験はありませんか?
現代のコミュニケーションにおいて重要なのは、他人を変えることよりも自分の感情や衝動をコントロールする力=自己統制力です。
この記事では、心理学的ツール「ENDCOREs」に着目し、感情に振り回されずに人間関係を良好に保つための方法を解説します。
まずは自分を整えることで、他者との関係も自然に整っていくのです。
第1章:ENDCOREsとは何か|対人スキルを客観的に見える化する心理学的ツール
ENDCOREs(エンドコアーズ)とは、コミュニケーションスキルを6つの観点から測定する心理学的尺度です(藤本・大坊, 2007)。
この尺度では、以下のようにスキルが分類されています。
基本スキル:
- 自己統制(Self-Control)
- 表現力(Expressivity)
- 解読力(Decoding)
対人スキル:
- 自己主張(Assertiveness)
- 他者受容(Other Acceptance)
- 関係調整(Relationship Adjustment)
以上の24項目の質問に7段階で答える形式で、自己理解を深めながら、対人スキルを客観的に見直すことができます。
この記事ではこの中から「自己統制」に焦点をあて、感情や衝動に振り回されずに人間関係を改善するヒントをご紹介します。
私の体験談:ENDCOREsで自分の“苦手”が言語化できた
以前、職場での人間関係にストレスを感じていた私は、「なんでこんなに疲れるんだろう」とずっとモヤモヤしていました。
そんなとき、ENDCOREsを試してみたところ、「自己統制」が他のスキルよりも低く出たのです。
それをきっかけに、自分の感情がすぐ言動に出てしまう癖に気づき、初めて“自分を整える”という視点を持てました。
漠然とした不安が、「ここを変えればいいんだ」と明確になった瞬間でした。
第2章:自己統制力が人間関係の土台になる理由|感情・衝動・欲求との健全なつきあい方
人間関係で起きるトラブルの多くは、感情の暴走や衝動的な反応によって引き起こされます。
つまり、自己統制力は、人間関係の土台を支える「内なるスキル」とも言えます。
イライラしたときに深呼吸できる
誘惑に流されずに冷静に判断できる
他者の期待に押しつぶされず、誠実に応じられる
こうした行動の背後には、自分の内面を適切に調整する能力=自己統制があります。
自己統制力が高い人は、自分の感情に振り回されず、他人との境界線を守りながら良好な関係を築くことができるのです。
私の体験談:イライラをぶつけずに済んだだけで、関係が変わった
ある日、同僚にイライラする出来事があり、以前の私ならすぐに反論していたと思います。
でもそのときは、少し深呼吸して「今怒りをぶつけても良い方向には進まない」と思いとどまりました。
結果、冷静に話すことができ、むしろ相手の誤解も解けて、関係が良くなったんです。
「感情を出さないこと」が正解ではなく、「感情に振り回されないこと」が大切なんだと実感しました。
第3章:自己統制力を高めるための4つの視点|感情コントロール・欲求の抑制・道徳判断・期待の調整
ENDCOREsにおける「自己統制」は、以下の4つの側面から構成されています。
- 欲求の抑制:衝動をコントロールする
「今すぐ◯◯したい!」という衝動に流されず、未来を見据えた選択をする力。
たとえば、怒りのままに言葉を発するのではなく、「少し時間を置いてから話そう」と冷静になることも、この力のひとつです。
トレーニング例:
・感情が高ぶったときは「10秒ルール」を意識して、一度止まる。
・誘惑に負けそうなとき、「それをした先に何が起こるか」をメモする。
- 感情統制:気分に左右されない安定感
ネガティブ感情を抱くこと自体は悪くありません。大切なのは、それにどう対処するか。
自己統制力のある人は、感情を否定せず「今はこう感じている」と受け止めることで、自分をコントロールしています。
トレーニング例:
・1日1回、今の感情を日記に書き出して言語化する
・「私は今、〇〇と感じている」と主観を客観視する練習をする
- 道徳判断:正しい行動を選択する力
場の空気に流されず、自分の価値観や倫理観に基づいて判断を下すことも、自己統制の一部です。
特に集団の中では、「自分が正しいと思うことを貫く力」が求められます。
トレーニング例:
・迷ったとき、「自分が尊敬する人ならどうするか」を考える
・日常の小さな選択にも、自分なりの理由を明確にする
- 期待応諾:他者の期待に応じる柔軟性
他人の期待に過度に縛られると、自分らしさを失ってしまいます。
しかし、自分を見失わずに相手に応じるバランス感覚こそが、成熟した自己統制と言えるでしょう。
トレーニング例:
・「これは本当にやりたいことか?」を自分に問い直す
・相手の期待と自分の気持ちの“間”を意識しながら行動する
私の体験談①:衝動で言い返しそうになった時、10秒待って救われた
ある日の会議中、上司の発言にカッとなって、反論しかけたことがありました。
でも、心の中で「10秒ルール」を唱えて一呼吸置いたんです。
すると、言い返すことよりも「今は聞くときだ」と思えました。
その後、冷静になってから伝えた意見はちゃんと受け入れられ、衝動的な言動の怖さと、“一時停止”の効果を痛感しました。
私の体験談②:日記に感情を書くことで、気持ちを整えられるように
昔は、落ち込むとつい自己否定が止まらなくなっていた私ですが、ある日から感情を日記に書き出すようにしました。
「私は今、焦りを感じている」と書くだけでも、少し自分を俯瞰できる感覚がありました。
気分に飲まれそうになったとき、この習慣に何度も助けられています。
私の体験談③:自分の価値観を守ったら、罪悪感が消えた
職場の飲み会に誘われたとき、「断ったら悪いかな」と無理に参加していました。
しかも、その飲み会では一気飲みを強要していました。
確かに職場での人間関係は大切ですが、一気飲みの強要はよくありません。
「自分がどうしたいか」を基準にしたとき、「いくら仕事の付き合いだとしても一気飲みの強要には付き合いたくない」と感じて断りました。
不思議と罪悪感よりも“自分の価値観を大切にできた”という満足感が残りました。
小さなことでも、自分の判断に従って行動する大切さを実感しました。
私の体験談④:「相手の期待」に応じすぎずに、断る勇気を持てた
以前、頼まれごとを断れずにキャパオーバーになっていた私。
でも、あるとき「これは自分の望みとずれている」と気づき、思い切って断ってみたんです。
すると、相手も意外とすんなり受け入れてくれて、「あれ、ちゃんと伝えれば大丈夫なんだ」と思えました。
“期待に応える=正解”じゃないという感覚は、私にとって大きな発見でした。
Q&A|よくある質問
Q1. 自己統制力って、生まれつきの性格ではないのですか?
A. いいえ、自己統制力は性格ではなく「スキル(技術)」と考えられています。
日々の意識やトレーニングによって、誰でも少しずつ高めていくことができます。
Q2. 感情を抑え込むのと、自己統制はどう違うのですか?
A. 感情を「抑え込む」ことは、一時的に感情を無視したり否定したりすること。
一方、自己統制は「感情を受け入れたうえで、冷静に対応する力」です。
感じること自体は悪くなく、大切なのはその対処の仕方です。
Q3. 怒りや不安にすぐ反応してしまいます。どうすればコントロールできますか?
A. まずは「10秒ルール」で一度立ち止まることを意識しましょう。
また、「私は今〇〇と感じている」と言語化するだけでも、自分の感情を客観視でき、冷静さを取り戻しやすくなります。
Q4. 他人の期待に応えすぎて、疲れてしまうのですが…
A. 相手の期待に応じることは大切ですが、自分の気持ちとのバランスを取ることがもっと大切です。
常に「これは自分の本音か?」と問い直す習慣が、自分を守る第一歩になります。
Q5. ENDCOREsはどこで受けられますか?
A. 現時点では大学や研究機関、カウンセリングの現場などで主に使われており、一般向けの簡易テストなども一部の書籍やワークショップで紹介されています。
気になる方は「ENDCOREs 心理テスト」などで検索してみるとよいでしょう。
まとめ:まずは自分を整えることから|他者とのより良い関係は自己統制力から始まる
人との関係をよくしたいなら、つい「相手を変えるにはどうしたらいいか」と考えがちです。
しかし、まずは「自分」を整えることが先決です。
感情や欲求に振り回されず、誠実に判断し行動できる人は、自然と他者との信頼関係も築いていけます。
自己統制力は、生まれつきの資質ではなく、日々の心がけと訓練で少しずつ育てられる力です。
今日から意識してみましょう。
参考文献
藤本, 学, & 大坊, 郁夫. (2007). コミュニケーション・スキルに関する諸因子の階層構造への統合の試み. パーソナリティ研究, 15(3), 347–361.