「そんなつもりじゃなかったのに、相手を怒らせてしまった」
「なんだか空気が読めていなかったかもしれない……」
こうした後悔は、私たちが“相手の気持ちをうまく読み取れなかった”ことに起因していることが多いです。
日常のすれ違いを防ぐカギは、「読解力(解読力)」にあります。
この記事では、心理学的なコミュニケーション測定ツール「ENDCOREs」をもとに、相手の心をくみ取る力=読解力を高める方法をお伝えします。
第1章:ENDCOREsとは?|対人スキルを6つの側面から可視化する心理学的アプローチ
ENDCOREs(エンドコアーズ)とは、藤本・大坊(2007)によって開発された心理学的なコミュニケーション評価ツールで、以下の6つのスキルで構成されています。
基本スキル
1. 自己統制
2. 表現力
3. 解読力(読解力)
対人スキル
4. 自己主張
5. 他者受容
6. 関係調整
この記事では、これらのうち「解読力(読解力)」に注目します。
これは、他者の言動や感情を正しく理解する力であり、信頼や共感のある関係を築くうえでの基盤となります。
私の体験談:相手に寄り添えていないことに気づかされた
自己診断学生時代、サークルでの人間関係がギクシャクしていた時期がありました。
話しているときは普通なのに、あとで「空気読んでよ」と言われて驚いたこともありました。
その後、心理学の授業でENDCOREsの簡易版を受けた際、自分の「解読力(読解力)」がかなり低かったことを知り、納得しました。
「話を聞いてるつもりでも、相手の感情までは読み取れていなかったんだ」と初めて気づけた瞬間でした。
第2章:「読解力」とは何か|相手の立場や感情を理解する4つの視点
ENDCOREsにおける「読解力」は、以下の4つの要素で構成されています。
視点 内容
① 言語理解 相手の話す言葉の意味や意図を正しく理解する力
② 身体理解 ジェスチャーや姿勢から気持ちをくみ取る力
③ 表情理解 顔の表情から感情を読み取る力
④ 情緒感受 相手の内面の状態を敏感に察知する力
これらの力がバランスよく発揮されることで、表面的な言葉にとらわれずに、相手の「本当の気持ち」に寄り添うことができます。
私の体験談:表面的な言葉だけを信じて、友人との距離ができたこと
昔、ある友人から「別にいいよ」と言われて、私はそのまま「本当に大丈夫なんだ」と受け取ってしまいました。
でも後日、「なんであのとき引き止めてくれなかったの?」と責められてしまい、混乱したことがあります。
今思えば、そのときの彼女の表情や声のトーンには、寂しさや葛藤がにじんでいたのかもしれません。
あの時「本当に大丈夫?」と一言聞けていたら…と思うと、読解力の大切さを痛感します。
第3章:読解力を伸ばすには?|共感力・観察力・質問力・自己内省のトレーニング法
読解力は、生まれつきの能力ではなく、意識と訓練で伸ばせるスキルです。ここでは、4つの視点に対応したトレーニング法をご紹介します。
- 共感力を高める|言葉に隠れた感情をくみ取る
ポイント:「何を言ったか」だけでなく、「どういう気持ちで言ったか」に耳を傾ける。
トレーニング法:
・相手の話を聞いた後に「つまり、〇〇って感じだったんだね?」と気持ちを言語化して返す。
・映画やドラマの登場人物の台詞に対して「どんな気持ちで言っているか」を考えてみる。
- 観察力を養う|しぐさや姿勢から気づく
ポイント:腕を組んでいる、視線を逸らしているなどの非言語サインに注目する。
トレーニング法:
・会話中の相手の姿勢や動きを意識的に観察し、変化を記録する。
・友人や家族の無意識のしぐさに気づいたときは、さりげなく尋ねてみる。
- 表情の読み取り精度を上げる
ポイント:顔には感情がにじみ出る。特に目元と口元の動きに注目。
トレーニング法:
・鏡の前で、怒り・喜び・驚き・悲しみなどの表情を自分で再現してみる。
・相手の話を聞きながら「今の顔、笑ってたけど本当は…?」と裏の気持ちを想像する練習。
- 自己内省で情緒感受性を高める
ポイント:自分の感情に敏感になると、他者の感情にも共鳴しやすくなる。
トレーニング法:
・一日の終わりに「今日いちばん動いた感情は何だったか?」を日記に書き出す。
・人と話したあとに「自分はどんな感情を受け取っていたか?」を内省する。
私の体験談:映画の登場人物から
“気持ちの奥”を想像するクセがついた読解力を高めたくて、まず始めたのが映画を見ながら「この人はどんな気持ちで今このセリフを言っているか」をノートに書き出すトレーニングでした。
最初は「怒ってるのか悲しんでるのかすらよくわからない」と思っていたけど、少しずつ感情の“グラデーション”が見えてくるようになってきたんです。
実生活でも、「今この人、ちょっと違和感ありそう」と感じ取れる瞬間が増えました。
以前よりも、「気づいてくれてありがとう」と言われることが増えたのが、自分にとっての嬉しい変化です。
Q&A|よくある質問
Q1. 読解力って“空気を読む力”と同じですか?
A. 部分的には似ていますが、読解力はより本質的な「相手の言葉・表情・感情を正しく理解する力」です。単なる雰囲気に合わせるのではなく、“相手の内面をくみ取ろうとする姿勢”が大切です。
Q2. 読解力は生まれつきのものですか?
A. いいえ。読解力は観察・共感・内省などを通じて、誰でも後から育てることができます。意識して練習することで、確実に伸ばせるスキルです。
Q3. 相手の感情を読み間違えてしまうのが怖いです。
A. 読解力は「察する力」だけでなく「確認する力」も含みます。「こう感じたんだけど、合ってるかな?」とさりげなく聞くことで、誤解を減らし、むしろ信頼が深まります。
Q4. 読解力を鍛えるために今日からできることはありますか?
A. はい、今日からできる簡単な方法としては、「相手の話を聞いたあとに気持ちを言葉にして返す(=気持ちの要約)」や、「相手のしぐさや表情を観察してみる」ことが効果的です。
Q5. ENDCOREsの読解力を自己チェックする方法はありますか?
A. ENDCOREsは専門的な心理尺度のため、一般には簡単に受けられないこともあります。ただし、大学の心理学講座や一部書籍で類似のチェックを体験できる場合もあります。簡易版を探してみるのも良いでしょう。
まとめ:読解力は対話の出発点|思いやりある関係性を築くために必要なスキル
読解力は、単なる“空気を読む力”ではありません。
それは相手の気持ちに寄り添い、理解しようとする姿勢の現れです。
相手の言葉の奥にある想いをくみ取れる人は、信頼され、話しかけられやすくなります。
つまり、読解力は「あなたの人間関係の質を大きく変える力」なのです。
まずは、小さな気づきから。
表情、しぐさ、声のトーンに意識を向けてみることから始めましょう。
それが、“わかってくれる人”への第一歩になります。
参考文献
藤本, 学, & 大坊, 郁夫. (2007). コミュニケーション・スキルに関する諸因子の階層構造への統合の試み. パーソナリティ研究, 15(3), 347–361.
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